米国の食品小売業界における最新動向から、デジタルシフトの凄まじい現実が明らかになった。FMIとNielsen IQが発表した2026年の最新レポートによると、米国のネットスーパーの売上は2028年までに4520億ドル(約67兆8000億円)に達すると予測されている。このデジタルシフトの波に乗り、「INSTACART(インスタカート)」が驚異的な成長を遂げている。2026年第1四半期決算によると、総収益は10億2000万ドル(約1530億円)、前年同期比14%増のとなり、初めて四半期で10億ドルの壁を突破した。プラットフォーム経由の総取引額は102億8800万ドル(同13%増)に達し、こちらも初の100億ドル超えを記録した。純利益も1億4400万ドル(前年比36%増)と絶好調だ。
▼店頭価格と同じ価格で提供する“Price parity”を導入した小売業者は、未導入業者に比べて10%も速いペースで成長しているという。さらに注目したいのが、生成AIを活用した新たな購買体験の構築である。インスタカートは、“Anthropic”のAIアシスタント、Claudeとの連携機能を追加した。顧客の意図を実際の行動へと変換するAgentic AIの真骨頂の実現である。例えば消費者が夕食のレシピと予算を伝えると、最寄りの食品スーパー複数店舗の在庫データや価格情報にアクセスし、その上、顧客の購買履歴まで加味して最適な商品を提案、自動的にカートに追加するのだ。
▼また、自社のアプリ内でもCart Assistantと呼ばれる対話型AIを米国の顧客25%に提供し始めており、消費者のレシピ検索や献立作りを強力に支援している。この圧倒的なデータインフラは、強力な広告ビジネスも生み出している。現在、9000以上のブランドがインスタカート上で広告を展開し、キャロット・アズ(Carrot Ads)と呼ばれる広告ネットワークを通じて、小売業者の自社サイトでも広告収益を上げられる仕組みを提供している。第1四半期の広告およびその他の収益は、前年同期比16%増の2億8600万ドル(約429億円)に達したとある。
▼インスタカートのデジタル化はもはやオンラインにとどまらない。同社が展開するAI搭載のスマートカートであるCaper Cartsは、すでに100以上の都市で導入されている。実店舗における買い物客の購買行動をデータ化し、リアルタイムでの在庫管理や店内広告の配信を可能にしている。ここでも、実店舗販売とオンライン販売の垣根は完全に消滅しつつあるようだ。
2026/06/01
