ネットスーパー事業が黒字化できた理由は・・・

「イズミ」は、2024年2月に発生したランサムウェア被害によるシステム障害の影響で長期休止したネットスーパー「ゆめデリバリー」が、その障害を乗り越えて年間黒字化を達成するなど好調が続いているようだ。西友から承継した「サニー」のネットスーパー事業の立て直し、未出店エリアへの拡大など、新たな挑戦もすでに始まっている。業界誌にその経緯が載っているが、その最大の理由は、ネットスーパーを単なる「商品配送サービス」ではなく、顧客の利用頻度と生涯価値を高める仕組みとして再設計したことにある。

▼好調に推移している要因だが、第一は、配送1回ごとの送料から月額定額制へ転換したことである。月額660円(未就学児のいる世帯330円)で、何度利用しても配送料を無料とした。それまで、顧客は注文のたびに送料を意識し、注文をまとめたり利用を止めたりしていた。定額制導入後は、月間利用頻度が2.2~2.3回から4.2~4.4回へと約2倍に増加した。1回当たりの購入金額は多少下がったが、月間の購入額は1.5~1.6倍となり、顧客生涯価値は大きく向上した。ネットスーパーの収益化には、客単価に加え、どれだけ利用するかが重要であることを示している。

▼第二は、実店舗とネットスーパーの価格や販促を別のものにしなかったことである。実店舗のチラシ特売品の約8割をネットでも同価格で購入できるようにした。ネットでは特売品が買えないという顧客の不満を解消し、日常的な使い分けを可能にした。アプリでも「本日の特売」「ゆめイチ」「クーポン」を前面に出し、店舗と同様の買物動機をつくっている。第三は、既存店舗を出荷拠点として活用する店舗出荷型モデルである。リアル店舗の商品、設備、人材を活用することで、初期投資や固定費を抑えている。一方で、店舗間でトラックを融通するなど、配送網を最適化している。

▼第四は、若い世帯との新たな接点として位置づけるなど重点顧客を明確にした。子育て世帯向けの低料金プランにより、実店舗より10~15歳若い顧客層を獲得している。リアル店舗とネットを併用する顧客は、月間購入額が約1.5倍になるという。さらに、生鮮・総菜の構成比を約40%まで高め、欠品率を0.8%以下に抑えるなど、食品スーパーとしての基本品質も重視している。イズミの成功は、定額制による頻度向上、店舗とネットの販促統合、既存資産の活用、配送コストの管理、若い顧客の獲得を一体化したことにある。ネットスーパーを、地域内におけるグループ全体の顧客接点と食品シェアを高める「ドミナント戦略の一部」として運営していることが、最大の特徴といえる。

2026/06/16