「顧客を集める流通から、顧客に近づく流通」への変化・・・

コーネル大学RMPジャパンで、ここまで何度も登壇頂いた「上原 征彦」先生の計報に接し、突然の知らせに深い喪失感を覚えている。今日、九段会館で「お別れの会」が執り行なわれる。先生は、1968年に東京大学経済学部を卒業後、日本勧業銀行(現みずほ銀行)を経て、公益財団法人「流通経済研究所」にて流通•マーケティング研究に従事された。その後、明治学院大学、明治大学専門職大学院にて教授を歴任されるとともに、ペンシルベニア大学ウォートン校客員教授として日米の取引慣行比較研究にも取り組まれた。著書に、『経営戦略とマーケティングの新展開』、『マーケティング戦略論』など多数ある。

▼日本の流通•マーケティング研究を牽引した第一人者と言っても過言ではない。また、産業構造審議会流通小委員会委員長をはじめ、農林水産省、防衛省、厚生労働省など多岐にわたる政府委員会の座長や委員長を務め、日本フードサービス学会、日本ヘルスケア学会の会長としても活躍された。研究•教育•政策提言のいずれにおいても、大きな功績を残した人物であった。

▼お世話になった先生から受けた一番の教示は、「顧客を集める流通から、顧客に近づく流通」への変化についての考え方だ。(株)ヤオコーで新しいフォーマットを創造するチャンスを得た時に、日本の小売業の業態変遷を分かり易く説いてくれた。その時の話が・・
「かつて、暮らしの中心に商店街があり、百貨店と共存していた。やがて、総合スーパー(GMS)が誕生、新しい業態間競争が始まり、食品スーパー、コンビニエンスストアと主役が移り変わって来た。(ドラッグストアも同じかな)。そして、通販や宅配サービスになるのかな・・・」と話された。これらの業態を「衰退業態」、「安定業態」、「成長業態」と区分した。

▼日本の流通業態の変遷を非常に明確に整理しており、いかにして消費者を店舗へ来店させるかが重要であった時代から、商品やサービスそのものが消費者の日常へ接近していく時代になると話されていた。先生はこれを、当時、話題であったJR東日本の駅構内に展開を始めた商業施設「ecute」を例にして解説された。この事を「集客型ビジネスから接客型ビジネスへの転換」と表現していたが、物理的にも精神的にも顧客に近づくビジネスを考えなさいということであったのだ。ここから、顧客を「存在」として捉えるのではなく、「状態」として捉える新しい店舗フォーマットづくりに繋げた思い出がある。現在の状況を見るにつけ、先生の先見性の凄さに今更ながら驚く。心より上原先生のご冥福をお祈り申し上げます。

2026/07/09