「効率化」と「働きやすさ」の両立が不可欠・・・

厚生労働省は、ハローワークにおける求人、求職、就職の状況をとりまとめ、求人倍率などの指標を作成、一般職業紹介状況として毎月公表している。5月の数値をみると、有効求人倍率(季節調整値)は1.17倍となっている。新規求人倍率(季節調整値)は2.11倍、正社員有効求人倍率(季節調整値)は0.99倍となっている。産業別にみると、生活関連サービス業,娯楽業(16.9%減)、卸売業,小売業(16.8%減)、宿泊業,飲食サービス業(14.4%減)、建設業(10.3%減)、学術研究,専門・技術サービス業(8.1%減)などで減少はしている。

▼ただ、少子高齢化と人口減少が進むなか、小売業の人手不足は一時的な問題ではなく、今後も長期にわたって対応すべき経営課題であることは間違いない。介護や育児などの事情から、従来型の画一的なフルタイム勤務が難しい人も増えている。原材料費、物流費、人件費の上昇や競争激化も重なるなか、労働集約型産業である小売業にとって、人材を確保できるかどうかは事業継続そのものを左右する。各社は、電子棚札、セルフレジ、AIによる発注支援などを導入、店舗業務の省力化を進めている。ただ、リアル店舗では売場づくり、商品提供、接客などを担う人が不可欠であり、技術の導入だけで人手不足を根本的に解消することは難しい。

▼そこで重要になるのが、従業員満足、すなわちESの向上である。従業員が仕事や働き方に満足し、働きがいを感じていれば、売場や接客の質が高まり、顧客満足(CS)の向上につながる。それがリピーターの獲得や業績向上をもたらし、企業やブランドへの評価も高める。ESは福利厚生や離職防止策ではなく、競争力と収益力を高める経営戦略として捉える事が出来る。ES向上には二つの方向がある。第一は、業務支援ツール、評価制度、キャリア支援など「ハード面」の整備である。第二は、多様な働き方や個性を認め、従業員の声を経営に反映する「ソフト面」の充実である。

▼業界誌には、「イケア・ジャパン」は、従業員が自ら異動や昇進を選択できる社内公募制度や店舗併設の託児所を整備し、育児・介護などの生活変化に応じた柔軟なキャリア形成を支援していること。また、「クックマート」では、社内SNSやアンケートを通じて従業員同士のつながりと帰属意識を高めているとのレポートが載っていた。今後の小売経営では、人材を削減すべき「コスト」ではなく、価値を生み出す「資本」として捉えることが求められそうだ。テクノロジーへの投資による効率化と、「辞めない、働き続けたい」と思える組織づくりを同時に進めることが、持続的成長と競争力向上の条件となる。

2026/07/28